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ヒト・コトを知る

異業界から挑むデータ×AIの最前線──エンジニアのキャリア

Toru.K
IoT&LLM本部
IoTアナリティクス部
IoTアナリティクス1G
グループリーダー

概要

システム開発の定石が通用しない、生成AIという発展途上の領域。そこで求められるのは高度な技術力だけでなく、正解のない問いに対して仮説と検証を繰り返す「探求心」かもしれません。

SIerでキャリアを積んだ後、データとAIの世界へ飛び込んだToru.Kさん。現在はIoTアナリティクス部のグループリーダーとして、最先端技術を活用した開発現場でチームをリードしています。

「現場の担い手であり続けたい」と語る彼がDATUM STUDIOで見つけた挑戦することの面白さとは。生成AIを実装することの難しさと醍醐味、そして変化の激しい時代を生き抜くためのエンジニア像を伺いました。

キャリア

40代で挑んだ「データ」の世界。マネジメントより現場を選んだ理由

Toru.Kさんは長年SIerで開発に従事されてきましたが、ベテランの域に達してからのキャリアチェンジにはどのような思いがあったのでしょうか。

一言で言えば「自分で作り続けたかった」という思いです。SIerの世界では、経験を重ねるほどプロジェクトマネジメントの比重が高まります。マネジメントは重要な役割ですが、私は現場で手を動かし、システムを構築していくことにやりがいを感じていました。

40代半ばに差し掛かった頃、これからのキャリアを見つめ直してみて、「自分の好きなことを純粋に突き詰めてみよう」と舵を切ったのがきっかけです。

数ある技術領域の中で、なぜ「データ」や「AI」を選ばれたのですか。

きっかけは、データサイエンスのコンペティションプラットフォームである「Kaggle(カグル)」に触れたことでした。

データを分析し機械学習モデルを構築する過程に、これまでのシステム開発とは異なる面白さと手応えを感じました。当時はクラウド環境における実務経験もデータサイエンスの専門知識もありませんでしたが、Kaggleに触れたときの面白さや新鮮な感覚が、私を未経験の領域へ踏み出す後押しをしてくれました。

実務未経験からのスタートとなると、キャッチアップには苦労もあったのではないでしょうか。

確かに容易ではありませんでした。入社当初は社内で飛び交う専門用語の意味を理解するところから苦労しましたが、それ以上に新しい知識を吸収していくプロセスに面白さを感じました。

これまでオンプレミス環境での開発経験しかなかったため、まずはクラウドの設計やアーキテクチャを理解することから始め、並行してデータ分析特有の言語やライブラリの習得に取り組みました。現在、IoTとLLM(大規模言語モデル)を扱う部署に所属していますが、この分野も技術進化のスピードが非常に速く、常に知識をアップデートし続ける必要があります。

チームの働き方

「自律」と「裁量」で成果を生み出す、エンジニアチームの働き方

現在、Toru.Kさんがグループリーダーとして率いられているチームの構成について教えてください。

私のチームは現在6名の体制で、新卒と中途入社のメンバーが半々の構成です。年齢層は20代中盤から30代前半が中心で、私が最年長となるチームです。

メンバーのバックグラウンドもさまざまで、私のようにSIer出身でシステム構築に強みを持つメンバーもいれば、大学で統計やデータを専門的に学び、数理モデルに強いメンバーもいます。それぞれの得意分野を活かしながら、互いに知見を補完し合いプロジェクトを進めています。

プロジェクトの体制や働き方についてもお聞かせください。

プロジェクトにもよりますが、基本的にはリモートワークが中心です。前職では対面でのコミュニケーションが主だったので、入社当初は「リモートでうまくいくのだろうか」と若干の不安もありました。しかし、ルールと目的、ゴールをチームで共有できていれば問題なく機能することがわかりました。メンバー各々が裁量を持って、業務を進めています。

私がマネージャーとして意識しているのは、「スケジュールの遵守」と「ゴールの明確化」です。マイクロマネジメントは行いませんが、タスクの期限と到達すべき品質水準については丁寧にすり合わせています。期日までに期待値を満たす成果が出ていれば、プロセスや時間の使い方は各自に委ねています。自ら計画を立て、責任を持って完遂する。この「自律」が前提にあるからこそ、メンバー一人ひとりを信頼して仕事を任せることができています。

プロジェクトの進行管理だけでなく、技術的な課題解決もリモートで行われるのでしょうか。

技術に関する疑問や困りごとがあればチームや部署の垣根を越えてSlackで共有されます。質問すると知見を持ったメンバーがすぐに反応してくれるので、壁にぶつかっても早期に解決策を見出せます。

この「知見を共有する文化」があるからこそ、たとえリモート環境でも効率的に業務を進め、技術課題に対応できる体制が整っています。

メンバーのスキルセットにはばらつきもあると思いますが、どのように業務を分担されているのですか。

たとえばLLMをシステムに組み込む場合、AIモデルそのものの知識だけでなく、それを実装・運用するためのアプリケーション開発に関するスキルも必要です。

SIer出身のメンバーはシステム周りの実装に強みを持ち、データサイエンス出身のメンバーはプロンプトエンジニアリングやモデルの特性を見極めることに長けています。小規模なプロジェクトでは要件定義からデリバリーまで一人で担当することもありますが、バックアップ体制を敷いたうえでシステム全体の完成度を高めています。

技術力

LLM活用を通じて磨く、探究心と実践的な技術力

現在取り組まれているプロジェクトについて教えてください。

大手企業の業務効率化のため、会議の音声データを文字起こししたうえで議事録作成を自動化したり内容を要約するシステムの開発・運用に携わっています。 Google の「Gemini」などクラウド提供型のLLMと、ローカル環境で動作する音声認識モデル「Whisper」も組み合わせ、セキュリティと精度のバランスを調整しながら実装しています。

従来のシステム開発とLLMを用いた開発で、最も違いを感じる点はどこでしょうか。

「不確実性」への対応ですね。従来のプログラムは同じ条件であれば同じ結果を繰り返す決定的な仕組みでしたが、LLMは同じ内容で入力しても答えが微妙に変わったり、期待した精度で出力されないことがあります。

精度を高めるためには、試行錯誤を重ねるしかありません。プロンプトの言い回しを調整したり、RAG(検索拡張生成)におけるデータのチャンクサイズ(膨大なドキュメントやデータを効率的に処理するために、小さな単位に分割する際の1つのチャンクに含まれる最大文字数やトークン数)を変えたりして、納得できる精度まで改善していきます。「今回はうまくいかないな」「こう言い換えたら、もっと正しく伝わるかも」と粘り強く調整するプロセスにおいて、SIer時代からの探究心が活かされていると思います。

試行錯誤を経て、システムが稼働した時の達成感はどのようなものですか。

自分が構築したシステムが、お客さまの現場で当たり前に使われているのを見るのが一番嬉しいですね。ログデータを見ると「今日はこれだけの人が利用してくれた」と実感できるので、その瞬間に大きな達成感を覚えます。

わかりやすい称賛の言葉よりも日々の利用状況から得られるこうした実感こそ、エンジニアとしての最大のやりがいです。

描く未来

AIエージェントの時代に求められるエンジニア像

今後の展望について教えてください。チームとして注力していきたい領域はありますか。

「AIエージェント」の領域に注力していきたいと考えています。現在はチャットボットのように人間が問いかけて答えを得る形式が主流ですが、今後はAIが自律的にツールを使いこなし、タスクを完遂するエージェント型が主流になると言われています。

例えば、人が細かく指示しなくても、AIがデータを読み取り、分析し、結果をグラフやレポートとして提示してくれる世界です。

AIが自律的に高度なタスクをこなすようになると、エンジニアの役割も変わっていくのでしょうか。

正直なところ「AIエージェントの台頭によって、自分たちの仕事がなくなってしまうのでは」という危機感は常にあります。コードを書く仕事や単純な調整業務はいずれAIに代替されるかもしれません。だからこそ、お客さまの要望通りに開発するのではなく、ビジネスの文脈を理解し、AIをどう活用すればさらに大きな価値を発揮させられるかまで設計できる能力が求められます。技術力とビジネス感覚の両輪でお客さまに価値を提案し、実装までやりきる力が、今後ますます重要になると思います。

最後に、Toru.Kさんのように新しい技術領域に挑戦しようとしているエンジニアへメッセージをお願いします。

実際に飛び込んでみると、SIer時代にシステム開発で培った経験を活かせる場面は多々ありますし、何よりこの変化のスピードの速さは非常に刺激的です。

現状維持ではなく、新しい技術に触れ続けたいという好奇心を持っている方なら思い切って挑戦してみてほしいですね。「異なる領域こそ、入ってみたら楽しいよ」と、かつての自分に言うつもりで伝えたいです。

DATUM STUDIO
IN FUTURE